割り箸の目釘がダメな理由

桜に昭マーク付きの試斬用軍刀の柄を交換した際に、目釘用の材もいくつか揃えました。

この柄は画像の通り目釘穴の位置をミスってしまい、鍔と切羽が入らないので試斬の際にしか使えませんが、気になっていたことがあったので暫く実験をしていました。

それは「割り箸目釘がダメと言われるのは本当なのか?」という検証です。

木製の目釘や、ましてや木製割り箸の目釘は強度の問題で絶対にダメだと言われています。

実際に、木の割り箸は指先でも簡単に割れてしまいます。

逆に目釘の材質に最も適しているのは「竹」だといわれています。

それも竹刀に使われる竹だとか、囲炉裏で長年燻された竹だとか、諸説あるそうです。

とすると、「竹製の」割り箸はどうなのでしょうか。

最近の割り箸は結構竹を使っているものが多いように思います。

 

今回は竹製の割り箸にサラダ油を塗って拭き取り、それを表面が変色する程度に燻す……という工程を数度行った、竹の割り箸製目釘を作って検証しました。

勿論屋外では危険過ぎて使えないので、屋内(玄関)で、万が一、刀がすっぽ抜けても傷まないような状況化(下にマットが敷いてある)で、主に段ボールを斬って検証しました。

しかも竹や太巻を斬るときのような重い負荷はかけてません。

厳密には数えていませんが、100回ほど斬ったら、目釘がこうなりました。

 

半分ほど折れかかっています。

凹んでいる側が棟側だと思われます。

色々と理由は考えられますが、

 

1)やはり竹製とはいえ割り箸材では強度が足りなかった。

2)茎と柄の目釘穴が微妙にズレているので、目釘にも必要以上の負荷がかかった。

3)合わせの柄なので内部に微妙な「遊び」があり、それも負荷となっていた。

 

この辺りが主なものだと考えられます。

割り箸材は本当の目釘材に用いられるような竹に比べたら密度もスカスカなので、やはり振り回したり試斬に使ったりという用途には、耐えられないと考えるべきでしょう。

段ボールをサクサクと斬っていただけでもこれですから、もっと硬かったり、質量のあるものを斬ったら一発で刀がスッ飛んでしまうかもしれません。

あとは「皮」の有無も大きいと思います。

この軍刀の元々挿っていた目釘も年月のためか折れかかってはいましたが、「皮」のついた丈夫そうな目釘でした。

実際に皮部分だけは折れずにしっかりと残っていました。

密度が高く、また皮部分を含んだ竹の目釘でないと、演武や試斬には厳しいということでしょう。

また個人的には、目釘は1本よりも2本仕様の方が、安心できます。

 

今後検証できるかはわかりませんが、竹以上に目釘に適した材が存在するのかという点は、気になります。

木は柔らかすぎてダメですが、逆に象牙や水牛の角など硬すぎる素材も、衝撃に耐えきれずポッキリと逝ってしまうので、ダメなようです。

では竹に近い素材として、カーボン樹脂(炭素繊維強化プラスチック)や防弾繊維素材の目釘などは、どうでしょうか。

刀の特に「柄」周りに関しては、従来の伝統的な素材や工法にも敬意を払いつつ、その一方で、現代的な素材や製法で進化できる余地が多分にある部分だと思っています。

 


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↑で段ボールを斬っている時に使った目釘は、もう少し頑丈な竹材のものです。

何度か目釘を挿し替えてます。