肉置のバランスが不均一な刀

 

現在試斬で使っているのが長脇差なので、60cm以上のサイズのいわゆる「刀」を購入しました。

98式軍刀拵の無銘刀です。

刻印等は痕跡も無く詳細は不明ですが、昭和13年から20年までの間に関あたりで打たれた刀だと思います。

画像のとおり刃紋はありますが鍛え肌も鍛え割も一切ないため、洋鋼(洋鉄)の素延べ刀身だと思われます。

元幅3.3~4cm、元重8mm以上と、軍刀では割と珍しくはありませんが、みるからに頑丈そうな剛刀です。

 

コンディションとしては物打ち付近にキズが無数に入っているので、実戦というよりはおそらく試斬で用いられていた刀の可能性が高いです。

刃の状態も、軍刀によくある物凄い蛤刃というほどではなく、健全な状態を維持しつつも充分以上に「斬れる」肉置です。

残念ながら柄の目釘穴が壊滅状態なので柄交換は必須(というかそもそも古い軍刀をそのまま試斬などで使うと、柄が折れたり砕けたりして重大な事故の原因になるそうなので、やめたほうがいいよう)ですが、刀身自体は刃毀れ、刃欠け、刃捲れ、刃切れ等一切なく、極めて試斬向きの刀だと思います。

 

しかし残念な点が。

特に古い刀だと曲がりや捻じれ等もあるとのことで、この刀も確認してみたところ、どうやら刀身自体の曲がり・捻じれはないようです。

 

↑棟側からみる限り、真っ直ぐに見えます。

 

しかし刃側から見ると……。

 

 

撮り方の問題もあるかとは思いますが、それを差し引いても刃の向きに「偏り」があることがわかると思います。

下の写真ではわからないレベルですが、肉眼で見ると明らかに佩表(差裏)と佩裏(差表)とで肉置が不均一になっていることがわかります。

 

 

これは刀自体というよりも、どちらかといえば「研ぎ」の問題だと思ったので、この程度であれば修正はできるのではないかと思い、研師さんにネットで問い合わせをしたところ、2万前後で下地研ぎを行ってくれるとのことでした。

美術研磨の場合は一寸で安くても3,000円、高い場合には1万も越えるので、研ぎ料だけで数十万、という場合が殆どだと思いますが、武用研磨で寝刃合わせやそこまで大幅ではない修正であれば、比較的安価にやってもらえるところもあるというのは、大変有難いです。

 

この刀のその後については、研ぎに出してまた返ってきてから記したいと思います。